coda

早くも2月半ば近く。

先月観ていたのに、ブログアップはやはり遅れ・・・。

評判の良い映画で、興味深い題材。

アカデミー賞にもノミネートされましたね。

 

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「コーダ あいのうた」

豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼いころから「通訳」となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。(映画館サイトより)

 

「coda」とは「Children of Deaf Adults」(耳の聴こえない、聴こえにくい親に育てられた聴こえる子供)と言うことだそうです。こういう呼び方をしているというのを初めて知りました。主人公が音楽の才能があるということで、音楽用語の「coda」(楽曲の終結部分のこと)とかけたタイトルとなってるのですね。

 

あ、以下ネタバレありです。

 

 

この映画で一番大きいのは、実際のろう者がろう者の役を演じているという点ですね。

主人公ルビー以外の家族を全てろう者が演じ、とてもリアルに感じました。

母親役マーリー・マトリン、昔「愛は静けさの中に」に出演し、主演女優賞も受賞したたのに、それ以降あまり見かけなくて。今回は適役です。しかも、他のキャストも是非ろう者を!と意見したそうなので、これは大正解、グッジョブ!

父親も兄も手話を自然に操り(第一言語なので当然ですよね)   しかも好演。

ルビー役のエミリア・ジョーンズは今回手話を特訓したのでしょうね。

彼女の初々しさ、コーダとしての葛藤、全ての思いを歌に表現する、その伸びやかな歌声に好感が持てました。

ルビーの歌の才能を見出し、導くV先生も良かったし、デュエット相手のマイルズ役は

どこかで見たと思ったら「シング・ストリート」に出ていた子だ~!

今回も歌う役ですね。役者さんたちは皆はまり役だった気がします。

 

物語自体は王道展開かな。

最初から「あー、これはヤングケアラーの物語だな」と観てました。

朝早くから家族と共に漁に出て、学校では居眠りするほど疲れ切った上、家族の通訳をしたり、さらに音楽の道へ進むために歌の練習まで入れるとなると・・・いくら若いと言っても過酷。

家族が社会の中で生きるには通訳の出来るルビーに依存しないといけない、でもこんなに頼られてしまうと「彼女の人生は?」と考えてしまいます。

せめて仕事中の通訳は人に頼むことはできないものか。

逆にハンディのある親の立場からすると、娘に頼むのが一番信頼できるし手軽で楽なのは想像できるし、気持ちはわかるのですが・・・。

才能あるルビーの歌を家族が聴くことができないというのも辛いところです。

 

父兄を招いての学校での合唱発表会で、盛り上がる歌の場面がスッと無音になる演出があり、ここで映画の観客たちは聴こえない世界を突然体感することになります。

多くの観客はビックリするでしょうけど、こんな状態がずっと続いているのがろう者の日常。映画館で体感できる効果的な演出だと思うと同時に、聴こえる観客向けとも言えるなと感じました。

この作品、洋画なので当然字幕がついてはいるのですが、通常字幕の他にバリアフリー字幕版というのがあるようで、音楽、効果音などの場面の説明が入るそうです。それだと耳のハンディがあっても、ぐっと作品への理解が深まりますよね。

ただ、そのバリアフリー版は期間が短かったり回数が少なかったりするのが残念なところ。最近は日本映画にも字幕版上映があったりしますが、それも同じような状況なので、バリアフリー意識が高まっている今、もっと皆が平等に作品を楽しめる環境ができるといいなと思ってます。

 

ちょっと脱線しましたが・・・

結局ルビーは家族の理解を得て、オーディションにも合格、音楽への道が開けました。

それは一つの終わり(音楽のcoda)であり、始まり。

一度は夢を諦めかけたルビーはヤングケアラーとして共依存に陥っていたのかな。

幼いころからろう者と聴者の間を繋ぐ役割は大変だっただろうけど、お互い密接で愛があるだけにそこから旅立つのは勇気がいることだったでしょう。

家族一人一人にとっての新しい「始まり」となります。

 

それにしても下ネタの多い映画でした(笑)     多感な10代の少女にそんなことまで(どんなこと?!)通訳させるとは・・・。ルビーにかなり同情してしまいました。美化せず、等身大の障害者を描くための設定かもしれませんが~うーむ・・・。

ごく普通に作品の中に様々なハンディのある役者が登場する、そんな映画が増えることを願ってます。