サウンド・オブ・メタル

暑い毎日、映画館の中は涼しいのでなるべく行きたいもの。でも 辿り着くまでが大変。

自転車走らせて着いた途端に汗が噴き出して止まらない!

 ・・・と言うわけでハンカチで拭き拭き観ました。

 

サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~」

突如難聴になったドラマーのルーベンは、一緒にバンドを組む恋人ルーに難聴者のコミュニティに連れていかれる。難聴であることをハンディとして捉えていないコミュニティの人々と過ごしながらも、その現実を受け入れることの難しさに直面するルーベンは、自分の人生を前に進めるために、ある決断をする…。

(映画館サイトより)

 

メタルバンドの話と思ってましたが、激しい演奏シーンは最初の方だけで、ドキュメンタリーように進む、しみじみとした真面目な映画。

アマゾンのオリジナル作品で、アカデミー賞にもいくつかノミネート、賞も獲得しています。配信で観ることはできるのですが、作品の性質上、映画館で観れたら・・・と思っていたら上映されて良かったです。ちょっと手持ちカメラの撮影のようなシーンがあるため、酔いやすい人は気を付けて。

 

以下、いつものようにネタバレありです。

 

 

トレーラーハウスで各地を周るルーベンとルーは毎日が充実している仲の良いカップル。でもルーベンにはドラッグ中毒の過去、ルーには自傷癖がある様子。

お互いが出会って克服してきたのに、突然のルーベンの難聴で生活が崩れ去ってしまう。自暴自棄になって再びドラッグに走るのではとルーが不安に思うのも無理はないでしょう。しかし難聴者のコミュニティに入ると外界と隔離されてしまうので、ルーと連絡も取れなくなるのです。

ルーベンは最初戸惑いつつも徐々にコミュニティに馴染んでいき、手話も覚えていきます。コミュニティ創設者から見込まれ、ここで働いて欲しいと言われるほどになるけど、やはり元の生活に戻りたい思いが彼を突き動かす・・・

なんとトレーラーを売り払い、高額の人工内耳の手術を受けるのです。

補聴器では無理なほど悪化しているのか、いきなり人工内耳に行くのはビックリなのですが・・・。というのも、なかなか使いこなすのが難しいということを聞いていたので。(もちろん人工内耳にして良かったという人もいらっしゃいます。)

 

手術さえ受ければ、また前のようにルーとトレーラーハウスで旅してライブ活動が出来ると思い込んでいたのに、慣れない金属音が響く状況に気落ちするルーベン。

サウンド・オブ・メタル」というタイトルはメタルバンドの音楽のことかと思ったら、この人工内耳を入れたことによる独特な音の響きの意味もあったのですね。

コミュニティ施設には居られずルーに会いに行くが、彼女は新しい生活に馴染んでいて以前のような二人には戻れないと悟る。

何とも切ない展開ながら、最後は潔さというか少し清々しさを感じました。

施設長が言っていた「コミュニティでは障害を治すのが目的ではない」という意味がクリアになる瞬間。

彼は受け入れたのでしょうね。

 

主人公ルーベン役リズ・アーメッドはドラマーとしての激しさを持ちつつ、状況の変化に葛藤する姿を繊細に好演していました。

聴覚障害がある施設長役のポール・レイシー、彼は両親が聴覚障害者ということで彼自身は実際はコーダなんですね。だから手話もスムーズ。

コミュニティで出会う先生役で素敵な人がいるなと思ったら、ローレン・リドロフでした。映画「エターナル」を観てないけど、彼女がマッカリを演じていて実際聴覚障害者なのですね。なるほど。

 

字幕は「バリアフリー字幕版」で(風の音)とか(金属音)とかの説明が入るのでわかりやすいです。聴こえづらさを音で観客に体験させる描き方はアカデミー賞の音響賞受賞ということも納得。

最近、こういった映画が増えてきたのは良いことかも。

「コーダ」は万人に受ける佳作でしたが、この映画は地味ながらも中途失聴者、しかも重度という辛さにリアリティを感じました。

映画ではルーベンのその後は示されてませんが、そっとエールを送りたくなりました。