2023年となって早くも立春過ぎてしまいました。
遅ればせながらの今年初の更新。
一月にやらないといけないことが一段落でホッとしたのも束の間。
なかなか落ち着きませんが、その合間にやっとやっと久々の映画館へ♪
なんと昨年の夏以来じゃないかしら。
「イ二シェリン島の精霊」
本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの孤島、イニシェリン島。島民全員が顔見知りのこの小さい島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。賢明な妹シボーンや風変りな隣人ドミニクの力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる。美しい海と空に囲まれた穏やかなこの島に、死を知らせると言い伝えられる"精霊"が降り立つ。
その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた・・・。
二人のおじさんがずっと喧嘩?をする映画。でもなぜか最後まで目が離せない。
舞台劇のようで、寓話的でもあり・・・見た後、いろいろ考えてしまう映画。
以下、ネタバレありです。
親友だと思っていた相手から、いきなり絶縁を言い渡されると面喰いますよね。
前日まで普通に接していたのに・・・パードリックの戸惑いは確かに分かります。
自分が何か悪いことでもしたのでは? でも思い当たることはない。
一方コルムはコルムで実はパードリックのことを退屈と思っていて、残りの人生を彼の退屈な話に付き合うのは時間が勿体ない、演奏家として作曲して作品を残したいと言う思いがある。それも分かるんですけどね。
ただあまりにもパードリックに対して極端な態度。長年のつきあいで、溜まり溜まったものがあるのか? だとしても、パブで他の人々と話をするのに、パードリックとは絶対口を利かないとか(暴力的な警官とまで話をするのに!)
小さな島と言うことで、パブが一つしかないというのも良くないですね~。
娯楽がないから、毎日のようにパブ通い。そして絶対顔を合わせてしまう。
しつこく絡むパードリックと、どんどん意固地になるコルム。
あー、これは修復不可能だわと呆れたり苦笑いしたりして観てましたが、指の事件があった頃から何だか怖いことに。
あまりのエスカレートぶりに、ここまでやるかと引いてしまいました。
引くに引けない個人間の状況と本土での内戦が重ねられる描写が秀逸です。
彼らの諍いがエスカレートするに従って、嫌な予感が頭に浮かび、警戒モードのスイッチか入りました。美しい島の自然の中、登場するロバやヤギ、犬たちに気持ちが和んでいたのですが、 もしやその動物たちが?と。小さなロバのジェニーを可愛がっているパードリック。予感的中・・・。あまりにも悲しいことが起きてしまい、パードリックは我を失ってしまう。自分の大切なものを失ったとき、報復として相手の大切なのを奪うのが一番ダメージを与えること。結局、コルムの住処を奪ってしまった・・・。
ただ救いがあったのは、二人とも動物への優しさを持っていたということ。
取り返しがつかないほどすれ違ってしまったけど、この点ではお互い歩み寄れるのに。
閉鎖的な島から抜け出せたパードックの妹シボーンとは違い、パードリックとコルムは一生これからも島暮らし。離れたり、少し歩み寄ったりを繰り返しながら、人生を終えるのかな。
シボーンに思いを寄せていたドミニクが悲しい。最初は困ったやつという感じで見ていたけど、意外と真理を突いたことを口にしたり、ピュアな面があったり。
彼も含めて、俳優たちの演技が良かったです。
アカデミー賞、いくつか獲得するのではないでしょうか。
人間も動物も窓から家の中を覗くシーンが何度かありましたが、心の中を覗き込むような描写で印象的でした。本当に人間の心理は複雑怪奇で厄介ですね。
そんな人間に寄りそう動物たちは、ただただ優しい(泣)
ロバちゃんの円らな瞳が忘れられません。