犬の力

今月、この映画も観ました!

 

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

 1920年代のモンタナ州、無慈悲な大牧場主フィル・バーバンクとその弟ジョージは地元の未亡人ローズと出会う。ジョージはローズの心を慰め、やがて彼女と結婚して家に迎え入れる。そのことをよく思わないフィルはローズとその連れ子である青年ピーターに対して冷酷な敵意をむき出しにしてゆく。しかし、そんなフィルには隠された秘密があり、ある事件を機に変わってゆくが…。 (映画館サイトより)

 

各国の映画賞を受賞、ノミネート。

観たかった作品です。何と言っても監督が「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオンなので、期待値が上がります。

いやー、これは配信だけでは勿体ない。

広大なモンタナの光景と重厚な物語、大画面で観るチャンスがあって良かったです。

 

以下、ネタバレあり。

 

 

芸達者なベネディクト・カンバーバッチが威圧的でマッチョな牧場主を演じる・・・

さてどうなることかと観ていましたが、本当に嫌な奴で(汗)。

でも周りからカリスマ的支持を得てるんですね。粗野で傲慢、そして時折見せる何か不安げな表情や孤独な姿。これはなかなか複雑な人物だと感じていたら、次第に解き明かされていきます。

ローズの息子、ピーターは冒頭から紙で花を器用に作るような繊細な青年で、フィルが彼を女々しいと徹底的に侮辱するシーンがあり、対照的な二人として描くのかなと思っていました。これが想像していたのとまた違った意味での「対照的」に転がっていきます。そのあたりの描き方が上手いですね。

 

フィルの弟のジョージは良い人なんですが、ちょっと疎いところあり。

ローズがピアノを弾けると言うことで屋敷にピアノを搬入。両親と知事を招待している食事会でピアノを披露することになってしまい、自信のないローズは必死で練習するも、フィルが横から楽器のバンジョーで嫌がらせ。結局客の前で弾くことが出来ず気まずい雰囲気に。あまりにもローズ可哀想。

ピアノ・レッスン」だ!と盛り上がってる場合ではなく、観てるこちらも胃がキリキリしそうな・・・これではローズが壊れてしまうと思っていたら、案の定酒浸りになってしまいました・・・。

フィルがここまで女性嫌悪するのは何故なんだろう。何かきっかけがあったのか、単にそういう主義なのか。弟のジョージを取られてしまうという焦り?

敬愛する伝説のカウボーイである、亡きブロンコ・ヘンリーの影響なのか。

 

何度も熱くブロンコ・ヘンリーの思い出を語るので、フィルの秘密はピンときました。

ただピーターをあれだけ女々しいと馬鹿にしていたのに、急に態度が変わってきたのは、ちょっと意外でした。急接近ポイントはやはり山の風景のシーンでしょうか。

ピーターを認め、面倒を見て可愛がるようになってくる。

ピーターもフィルを慕っているように見える。

でもこの時点で何となくわかりましたね~。カンピオンの映画ですから!

ピアノ・レッスン」でも娘がかなり重要ポイントでしたから!

いや、もっと前のウサギのシーンでピーター、あなたって人は・・・と。

ウサギが出てくると何かあるぞと身構えたのですが、そちらでしたかと言う感じ。

(動物好きには辛いシーンが多いかも。フィクションとしてスルーするしかないです)

 

あとは最後まで、あーやっぱり、やっぱり・・・の連続で。

こういう映画だったんだ~と思いました。

いやもう最後フィルの、ガチガチの鎧を脱いだというか、全てを脱ぎ落した顔が何とも頼りなげで、少年のように弱弱しく、このシーンのためにカンバーバッチ起用したのではと思うくらいでしたね。

ピーター役のコディ・スミット=マクフィーは独特の風貌。

以前観た映画「モールス」の男の子でしたか。

かなりのインパクトで印象に残る演技、今後も期待です。

 

全編通して不穏な雰囲気に包まれ、緊張しつつ目が離せない。

そして観終わってからもしばらく考えてしまいますね。

 

「私の魂を剣から、私の最愛の人を犬の力から救い出してください」

という聖書の言葉からのタイトル。

心がざわつく怖い映画でした。